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<卒業>

大学の卒業式。

私はこうして大学に通い学士を取得して「大卒」という肩書を得る事ができた奇跡に感謝していた。
いや、奇跡に感謝したのではない。奇跡を起こしてくれた父に感謝していた。

母が帰らぬ人となったのは、まだ私が小さかった頃で、私には母の記憶があまりない。
私には妹がいるのだが、妹が生まれて間もなく、母は病を患い他界。
小さな娘を2人抱えて、父は必死に仕事と子育てを両立させた。

男でひとつで子ども2人を育てるのは大変だったに違いない。再婚を考えたかどうかは分からないが、父は再婚する事なく、ひとりで私たちを育てた。

本来ならば働き盛りでいくらでも稼ぐ事ができたであろう壮年期を、父は私たちのために仕事のランクを落として定時で帰れるように調整してくれた。
そのため、我が家は決して裕福ではなかった。

大学進学は最初から諦めていた。
公立の高校を卒業したら働こう、そう思っていた。

 

ところが父は「もし父さんに遠慮したり、うちの家計の事を心配したりして進学しないと言っているなら、それは認めない。少しでも進学したいと思っているならば進学しなさい」

と言い出した。

このご時世大学を出ていなければ就職の幅も狭くなってしまうし、何よりも外的な理由で希望する人生を歩ませてやれないのには耐えられない、と父は語った。

 

私は可能な限り家から近い大学に進学し、アルバイトである程度の生活費を稼ぎながら学業に勤しんだ。

それでも学生がアルバイトで稼げる額など知れている。4年間、無事大学生活を送り、今こうして卒業証書を手にしているのは、ひとえに父のおかげだった。

 

父に何かお礼を、と思い、アルバイトで稼いだ金で財布を買った。

もう何年も、安物のボロボロの財布を使っているのを知ったから。自分では決して贅沢品を買わずに、使えるものは使えなくなるまで新調すらしなかった。

 

「ただいま」

 

卒業式を終えて帰宅すると、父と妹が元気よく出迎えてくれた。

何やらソワソワしている。

 

「今日はお祝いだよ!」

 

妹が嬉しそうにそう言った。

 

「卒業、それから就職、おめでとう」

 

父がそう言って、私を居間に通した。

 

そこにはご馳走が並んでいて、私は予想外の出来事にあっけに取られてしまった。

二人に急かされて席につき、食事が始まった。

 

「4年間、よく頑張ったな。本当にお疲れ様」

 

父は笑顔でそう言って、私に酒を注いだ。

 

「いやいや、何言ってるの、逆に私がお父さんにお礼を言わなくちゃって思ってたのに」

 

私はそう言って、父に財布を差し出した。

 

「お父さん、本当にありがとう。これから一生懸命働いて、恩返ししていくね」

 

父は驚いた顔を見せて、財布を受け取った。

その顔が次第に歪んでいく。そして、父の目からは大粒の涙が零れだした。

 

「ちょっと、泣かないでよ」

「お父さん、涙もろくなったね」

 

私は気恥ずかしくなり強めの口調でたしなめ、妹はその隣で茶化した。

父は涙を拭いながら「すまん」と言って、ごそごそとカバンの中をさぐった。

カバンから出した父の手には小さな箱が握られていた。

 

「父さんからも、ほら」

 

父はそう言って、にぎっていた小箱を私に手渡した。

 

「え?なに?」

 

「開けてみろって」

何だろう、そう思いながら包みを開けると、中から美しいパールのネックレスが出てきた。

 

「これ・・・」

 

「卒業祝いと就職祝いだ」

 

「だって、これ、まさか、本物・・・?こんな高いもの・・・」

 

「いや、お前が心配するほどとんでもない額じゃないから安心しなさい。お前もこれから社会人になる以上、女性として、何か良いアクセサリーのひとつも身につけないとな、と思って」

 

そう言う父の顔が赤いのは、酒のせいなのか、照れているのか、よく分からなかった。

 

父は昔から照れるとやたらと饒舌になるところがあった。

そんな父は、続けてペラペラと喋り始めた。

本真珠に蒔絵をデコした幸せジュエリー
First Pearl Origin
いつも身につける、
ちょっと特別な日にも身につける。

「真珠は大人の女性ならひとつは持っているべき宝石だ。

冠婚葬祭でも使えるし、何よりも品があって嫌味が無い。
この真珠はFIRST PEARL ORIGINというブランドのもので、初めて真珠を持つという人向けに、さらりと身に着けられるパールというコンセプトで売り出しているんだそうだ。蒔絵が施されているだろう?蒔絵ってのは縁起物でな、幸せを運んでくれるそうだ。

色んな柄があって、父さん、よく分からなかったが、一番お前に似合いそうなオリーブにしたんだ。柄が入っていると、冠婚葬祭っぽい雰囲気とはひと味違う、普段使いできそうなかんじになるだろう?会社にもつけているだろうと思ってな」

まるで店員さんからの受け売りのような喋り方に、私はクスリと笑ってしまった。

「とにかく、だ。父さん、女性のことはよく分からんが、大事な娘に何か相応しいプレゼントをしたくてな」

父のその言葉に、私は笑ったままの表情で急に胸が熱くなり、目頭まで熱くなるのを感じた。

涙は止める事ができず、次から次へと溢れてきた。

父からアクセサリーをもらう日が来るなんて思ってもみなかった。

私からお礼をしようと思っていたのに、これから沢山恩返しをしようと思っていたのに、父はまだ私に与え続けるのか。親は、いつまでも親なんだなぁ。そう思うと、感謝と幸せで涙が止まらなくなった。

「涙もろいところはお父さん似なんだよね」

妹が隣で茶々を入れてきたので「やめてよ」と笑いながら返して、そんなやりとりを見て父も笑い、我が家に温かなひと時が流れた。